<神田川沿いの街 早稲田の街と庭園-4>

江戸の大名庭園にさかのぼる歴史をもつ庭園

甘泉園公園③

□中島の洲浜と灯篭

 中島には、ゴロタ石を敷き込んだ洲浜があります。洲浜の先端には、天端(てんば)の平らな石の上に小さな置灯篭が据えられ、池辺の風情に趣を添えています。洲浜と灯篭という取り合わせは、比較的多く見られる景色ですが、江戸の大名庭園や明治の大富豪の庭園などでは、洲浜には大形の雪見灯篭が据えられているのが普通です。古河庭園には、その代表的な例を見ることができます。

 そのような大形の灯篭を使わずに、小さな置灯篭を使ったところは、この庭や池のスケール感からも、ほどのよい大きさと感じることができますが、またこの景色はどこかで見たことがあるような気がするのも確かです。

 洲浜に置灯篭という景色で知られているのは、桂離宮の庭で、松琴亭を背景に洲浜に据えられた岬灯篭の写真は多くの人の知るところです。その景を甘泉園に写したのが、この部分なのです。ここでは、岬灯篭の代わりに手毬灯篭(玉手灯篭ともいう)を使っています。

 こうした〝写し〟を行うことは、庭園ではよく行われていて、〝本歌取り〟などともいわれる手法です。 こうした〝桂離宮写し〟を行ったのは、おそらく公園として公開するために、整備改修が行われた昭和43年~44年頃ではないかと思われます。

 それというのは、灯篭が新しく、甘泉園の現在の形態が造られたといわれる相馬邸時代(明治30年頃~昭和13年)の灯篭ではないことや、桂離宮についても明治、大正期には現在ほど評価は高くなかったこと、などを考え合わせると後世に造られたものと推測したくなりますが、どうでしょう。

 それはともかく、現在の庭園景観の中でも、洲浜と灯篭とは甘泉園を代表する見どころであることは、確かでしょう。

□沢飛び・石橋

 池や流れがあって、沢飛びや橋を設けることは、観るという視覚だけではない、水上を渡るという身体感覚を刺激する体験がそこに生じることになります。沢飛びは、踏みはずせばそのまま水中に転落するという緊張感が伴いますが、橋はそれに比べればはるかに安心して歩くことができます。しかし、水を渡るという感覚は、常に新鮮であり、庭を散策する楽しみは、そのような庭中にちりばめられた仕掛けを見つけ、体験することといえるのかも知れません。

 甘泉園では沢飛びは、滝の前の流れに1ヶ所と下段の池で、上段の池からの落水を見せる位置に1ヶ所とあわせて2ヶ所に設けられています。

 

 いずれも庭中の見どころで、水の落ちる様子を眺めるために設けられたと思われますが、水上の飛石に立ち止まって眺める不安定さや緊張感をあえて狙ったものと考えられるでしょう。

 それに比べると、中島に架けられた石橋は、巾も広く堂々としていて、水の上を渡る不安感はほとんどないと言ってもよいでしょう。

 

 1つは1枚の広い橋石で、もう1つは2枚の橋石をくい違いに架け、変化をつけていますが、いずれも立派なもので、明治期の作庭時に設けられたものと思われます。

営業時間

平日10:00~18:00 

定休日

土・日曜日、祝祭日

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