園内には、池のほとりを巡る園路の他に、台地の斜面を覆う樹林の中を散策する園路が、設けられています。斜面を上り下りする園路をたどりながら、散り始めた紅葉の上に、秋晴れの青い空が広がっていたり、斜面の下に水面が陽を反射して光っているのが見えたりすると、あたかも郊外の山路を歩いているかのような気持ちが生まれます。これも、園路を歩くにつれ景色や趣が変わる回遊式庭園の魅力であり、楽しみであることを改めて感じます。
樹林を構成している木々はいずれも大木になっていますが、樹種としては常緑樹ではスダジイが多いように思います。ほかにはシラカシ、クス、ところによってはアカマツが見られます。落葉樹では、サクラやモミジは花や紅葉を楽しむために植栽されたものと思われますが、ムクノキ、エノキ、イイギリ、ホオノキ、ミズキなどは、実生から生育した樹木であるとも考えられます。
この樹林は、もともとあった斜面の自然林を利用しながら、庭園としての景観を考え、花や紅葉が楽しめる植栽を加えて作り上げられたのではないでしょうか。スダジイの多いのは、やはり古くからの樹林であったことを示していると思われます。それは、この新江戸川公園にも、近くの芭蕉庵にもスダジイの古木がみられ、また椿山荘には樹齢およそ500年という御神木のスダジイがあるのをみても、この斜面の緑地は江戸時代から続く歴史を持っているように思われるからです。