<神田川沿いの街 目白台の街と庭園-15>

芭蕉庵 ①

□ 芭蕉庵の庭

 新江戸川公園を出て、神田川沿いの道を駒塚橋まで戻ると、台地を上がる急峻な胸突坂をはさんで、水神社の反対側に芭蕉庵があります。ここは、俳人松尾芭蕉の遺蹟の一つで、『江戸名所図会』にも描かれている江戸時代からの名所です。

 神田川になだれ落ちるような斜面の裾近くに、僅かな平場があり、そこにこじんまりした建物(芭蕉庵)と、池を中心とした庭が作られ、ところどころに芭蕉の句碑が立っているのですが、今でも多くの人が訪れるところになっています。

 台地の斜面からは、今も湧水が湧き出していて、池の水源となっていますが、やや縦に引き伸ばされたような瓢箪形の池そのものはさほど広くはありません。岸辺の木々が水面に枝を伸ばし、静かに空の青さと紅葉を映している池の姿は、場所こそ違いますが、有名な芭蕉の句「古池や 蛙飛こむ 水のをと」を想いおこさせる枯淡の味があります。

 

 こうした味わいを大切にする俳諧の美学から見ると、いわゆる庭園的な造形や、大きな庭石、手入れの行き届いた木々、あるいは技巧を凝らした石組みなどは、かえって興趣を削ぐものと思われますが、この芭蕉庵の庭にはそうしたものは見当たらず、素朴で平凡な,それだけに人工や作為の目立たない景色が広がっているのです。

 

 それでも池の中ほどに掛けられている土橋が、かろうじて庭園らしい景観をつくりだしていますが、それも欄干のついた木橋でもなく、石橋でもない、土橋というのがこの侘びた風情にぴたりと調和しているようです。

 そうした感じは池だけではなく、斜面を登る石段や、土留めの石積、斜面の園路にも現れていて、この庭が昔から持っていた俳諧の美学とまでは言わなくても、俳諧的な感覚によって作庭され、それが現代にまで受け継がれてきたように思われます。

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