<神田川沿いの街 目白台の街と庭園-16>

芭蕉庵②

□ 瓢箪池について

 芭蕉庵の池の形は、瓢箪形といわれる形をしています。この形はシンプルですが、池の汀線をどこから見てもひと目で見渡せない形で、変化や奥行を感じさせることができるといわれています。そうしたことから、多くの庭園の池の形態に取り入れられています。

芭蕉庵平面図(クリックで拡大されます)
芭蕉庵平面図(クリックで拡大されます)

 実は、このブログで取り上げた、早稲田の甘泉園公園の池も、新江戸川公園の池も,瓢箪形の池であったのを覚えているでしょうか。大きな池は大きいなりに、水面の広がりそのものが庭園の魅力となりますが、小さな池は小さいなりに隠された水面を、想像させることによって、実際以上の広がりをイメージさせることができるのです。

甘泉園公園平面図(クリックで拡大されます)
甘泉園公園平面図(クリックで拡大されます)
新江戸川公園平面図(クリックで拡大されます)
新江戸川公園平面図(クリックで拡大されます)

 また瓢箪形とは、大と小との水面のあいだがくびれて狭くなっている形で、そのくびれたところが、池の対岸に渡る橋などをかける場所になります。そしてその橋が、庭の景観ポイント、つまり見せ場となり、さらに橋の上、つまり水面上から建物や庭を見返る場ともなるのです。

 

 このような見方から、三つの瓢箪池について振り返ってみると、芭蕉庵の池は最も瓢箪池らしい池と考えられます。大きな方の水面が、縦に引き伸ばされたようになっていますが、これも斜面の途中という地形的制約のためでしょう。

 

一方で新江戸川公園の池は、もともと瓢箪池であったことが疑わしいほど、瓢箪池としては崩れた形をしています。その中で、甘泉園公園の池は、庭園デザインという点からは最も変化に富み、面白さを感じさせる、デザイン性の強い池と言えるでしょう。

 

 ここでもう一度、甘泉園公園の池のほとりに立って水面を眺めてみます。まず、普通に池を見るかぎり、多くの人は二つの池があると思うだけで、それが瓢箪池という認識は持たないのではないでしょうか。それは、二つの池に段差があり、小滝によって接しているために、別々の池と見てしまうためです。ところが、平面図を見ると、これは実に見事な瓢箪形をしていて瓢箪池にまぎれもないのです。

 

 こうしたデザインは、緩やかな斜面に池を作るという地形的条件の中から生まれたものと思われますが、平面図というのは誰でもが見るものではないので、斜面の上つまり作庭時には存在した、庭を見下ろす建物(現在の水稲荷社のあたり)から、瓢箪池と見ることができるように作られていたのではないでしょうか。

 

 もう一つ甘泉園で面白いのは、瓢箪のくびれたところには、橋ではなく沢飛び石によって両岸をつないでいる点です。沢飛び石に乗って下段の池の中から上段の池の水面を見せるという、極めてトリッキーなデザインです。そしてその代わりに、上段の池に中島が設けられて二本の石橋が掛かり対岸とつないでいるのです。

 

 このあたりのデザインは、作者の意図を勘ぐれば、橋を作らずに沢飛び石にしたことといい、池の水面の広さに比較して中島が大きすぎることといい、池のほとりに立っただけでは、あえて瓢箪池に見えないように作られているような気がします。そして、その上で台地上の建物から見下ろした時に、はじめて瓢箪池であることがわかるような仕掛けだったのではないでしょうか。

 

 少し想像に溺れすぎているかもしれませんが、庭を見る楽しみは、ガイドブックに書かれている解説どおりに見るだけではなく、自分なりの見方や解釈をしたり、想像力を働かせて、昔の姿を思い浮かべたりするところが面白いのではないでしょうか。その意味では、三つの瓢箪池が、近くにあって、それぞれの特徴を見比べることができるこの地域は、庭めぐりの好きな人にとっては、なんとも楽しい街と言えるかもしれません。

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