<神田川沿いの街 関口台の街と庭園-8>

椿山荘庭園④

□ 三重塔と庭園

 滝を右手に見ながら園路を進むと、西の丘に登る石段となりますが、園路の幅も広くなり、手摺もついてずいぶん登りやすくなりました。このあたりも近年整備されたようです。石段を登りきると椿山荘のシンボルの三重塔が目に入ります。
 三重塔もようやく修復が終わりましたが、やはりその存在感は圧倒的です。なにしろ寺院の境内でもない庭園の中に、三重塔が立っていること自体、きわめて稀なことであり、都内では他に例を見ない景色なのですから(横浜の三溪園も特別です)。さらに椿山荘が、三重塔のスケールに負けないだけの1万8千坪という広さと、地形の変化を持つ庭園であることにも改めて思い至ります。
 庭園の空間構成としても、三重塔が西の丘の上にあって、北の丘のプラザ棟や東の丘のホテル棟から谷を隔てた適度な距離で、中景とでもいう位置に樹林を背景にしてすっくと立つ姿は美しく、視覚的に庭園の中心であることは、見るもの全てが感じるところで、まさに「絵になる景色」と言えるでしょう。

 三重塔の存在はそれだけに留まらず、空間をひとつにまとめる求心力のある造形物としても他に代え難い存在です。二つの谷戸に分断された庭を、空間的にひとつの庭として統合するためには、このスケールと独特の形態があってこそ可能であったと思われます。

 

 さらに三重塔の持つ歴史的、文化的、建築的価値は、誰にでもひと目でわかる特徴的な形によって、来場者に理解されやすく、またそのことによって施設そのものの伝統、あるいは風格という価値につながっているようです。

 

 三重塔の周りは芝生が広がり、庭園としての造形性はとりたててありませんが、周囲からの視界を遮る木々も整理され、塔の裏となる西側には常緑樹が茂り、隣の蕉雨園の樹林と一体となって、緑濃い背景を作り上げているのは、周りから眺められ、見られる場所として位置づけられているためでしょう。その意味ではほとんど芝生のみという、近景としては最もシンプルな庭が、中景では三重塔と相まって最も絵になる景色として見られるという、逆説的なおもしろさがあります

 しかし、西の丘の上に立ってみると、北から東にかけて建物が大きく壁のように連なっているのが見え、向こう側の、つまり見る側であったものが、見られる側になると、残念ながら「絵のような景色」というわけにはいかず、「現実の景色」ということになります。
 こうしたことは、歴史的な庭園を、現代の環境と経済性のもとで利用するときに、常に起こる問題と言えますが、「和と洋」「伝統と現代」という近代以来の課題は、現代においても解決し得ない問題のようです。

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