<白金台の街と庭園-5>

池田山公園②

□ 台地下の正門とアプローチ

  池田山公園の入口は、台地の上と台地下の2カ所にありますが、正門は台地下の品川区立第三日野小学校と向かい合った位置になります。石積みの堂々とした4本の門柱が立ち、車輌用の両開きの門扉と、脇に人の出入りする片開きの門扉をもつ、風格のある門構えです。

風格のある石積みの門柱の正門
風格のある石積みの門柱の正門

 この正門の位置は、建物が台地上にあったのにもかかわらず、台地の下に設けられていて、池田山の住宅地を抜けて公園を訪れると、斜面を上る長いアプローチ道路を造ってまで、なぜ台地下に正門を置いたのか、少し不思議な感じがします。

 

 正門とアプローチ道路は、公園になる前の神戸(かんべ)氏が邸宅を建てた時に造られたものですが、正門からゆるやかな曲線を描いて台地上の建物のあった平坦地まで上がっていて、その占める面積は半端な広さではないからです。敷地の有効な利用を考えるならば、この面積はあまりにももったいないと思えるのです。

 

 池田山公園のように、台地とその下の斜面を利用した屋敷地で、台地下に正門を設け、台地上の邸宅に上るアプローチ道路を造る例は、いくつかの事例があります。

 

 それらは、池の端の旧岩崎邸や音羽の旧鳩山邸(鳩山会館)に現在も見ることができますが、いずれも旧市内の幹線道路からアプローチのしやすい位置に、正門が設けられているようです。ここでもそうした事情があったのかもしれません。

 

 正門を入ったアプローチ道路沿いには、井戸や巨大な景石が点々と据えられて目をひきます。前庭ともいえるアプローチ沿いに、これほどの石が使われているからには、本庭はどれほどの庭が造られているのか、期待が湧くように演出されていたと考えられますが、どうでしょうか。

曲線を描いて台地へ上るアプローチ道路は先の景観への期待感をもたらせるようだ。
曲線を描いて台地へ上るアプローチ道路は先の景観への期待感をもたらせるようだ。

 門を入ってすぐ右手にある井戸は、屋根の棟木に取りつけられた滑車で、2本の鋼の先につけた桶を使って水を汲上げる車井戸の型をとっています。

 

 こうした車井戸は、普通家の近くの庭に設けられるもので、このように建物から遠く離れた位置に造られることはありませんし、屋根を掛けているのも、実用というよりは庭園の添景として作られた装飾井戸といっていいものかもしれません。

 

 装飾とはいうものの井戸側は、円柱形の石材のくりぬき井戸で、周囲を石で囲んで井戸構えの役石を配した本格的な造りで、庭園添景物として見ごたえがあります。

復元された屋根付きの車井戸。本格的な井戸構えを見せている。
復元された屋根付きの車井戸。本格的な井戸構えを見せている。

 景石も、数は少ないものの、その大きさが際立っています。景石は立石だけではなく、偏平な平石を低く据えているのは、低木を使わず、視界を遮らない広がりを感じさせるためと思われますし、地表面は苔や下草ですっきりと見せるための工夫であったとも思われます。

 

 アプローチ沿いに、これらの大石や飾り井戸を点在させているのは、いかにも大邸宅のアプローチにふさわしいものですが、こうした造形や配置からは、車での通行時の車中からの見え方に配慮した作庭であったのかもしれません。

平石の背の模様を見せるように、低く伏せられた大石。視線を遮る低木類がないので、奥まで見透かすことができる。
平石の背の模様を見せるように、低く伏せられた大石。視線を遮る低木類がないので、奥まで見透かすことができる。

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