<白金台の街と庭園-23>

白金台の裏道・小道⑦

□ 消えゆく裏道・小道

 都心3区の一つと言われる東京の真ん中、港区の白金台の街を歩いて、思いもかけなかった昔の東京の面影が残る裏道や小道をたどることができたのは、なんともうれしく楽しいことでした。しかし、こうした裏道や小道がいつまで残るのか、そうした心配もないわけではありません。今は白金台のような都心といってもよい街は、わずかな土地であってもビジネスの対象となり商品となって、マンションや商業ビルが建てられ、道路は拡幅されて広い道路がつくられていきます。

 

そうした世の中の動きの前では、街の歴史を伝える建物や石垣、水路の遺構も百年をこえる古木も、それどころか地形すらも変えられて、ついにはそこに生きてきた人の生活も跡形もなく消し去られてしまうのです。後には、裏道や小道といっても何の風情もない、ただ道幅の狭い道路だけが残るのではないでしょうか。道は車両の通行という機能さえ十分であれば、そこに暮らす人の思い出や、街に対する人の感情、感覚など必要としない場所であり、空間と考えられているのかもしれません。東京はビジネスの街であり土地は利益を生み出す道具にすぎないと考える人たちが政治や経済を動かしている限り、東京という街は、壊され続けるのかもしれません。東京は明治の頃には一部の大富豪が土地の大部分を占有していましたが、今はビジネスを第一としている企業が土地を買占め占有しているようにも思えます。東京は、いつの間にか普通の人が住み続けることのできない街になってしまったようです。

 

 そんな繰り言を今更のように呟いてみても、なにも変わらないであろうことは重々承知してはいるものの、白金台の裏道を歩いてみると、奇跡のように残されている昔の街の姿に、つい哀惜の気持ちが生じるようです。そして街歩きの先達である永井荷風が、江戸から東京と変わり、近代都市に変貌していくさなかに、近代化された街を避けて裏道や路地をたどり、懐かしい江戸の街の面影を求めて街を歩いたことも、思い出されるのです。『日和下駄』はそんな荷風の街歩きの記録であり、また闇雲に近代化を進め、街を壊し続ける世の中の動きに対する異議申し立ての書でもあったようです。そして何より江戸から東京へと続くこの街への哀惜の書でもあったのでしょう。

 

 こうしたことを思うのは、今回歩いた白金台三丁目から二丁目にかけて都市計画道路の環状4号線が通る計画があるからです。計画では、外苑西通りが目黒通りにぶつかる白金台交差点から、芝白金団地の北側部分を削って、三田用水の遺構を呑み込み、今里地蔵の脇をかすめて、さらに二丁目の住宅地を突っ切る形で桜田通りへつながることになっているからです。この道路のルートはまさに今回歩いた道筋の大半と重なっているのです。つまり、奇跡的といってもいい、歴史と古木の緑あふれる、昔の東京の山の手の風情を感じさせてくれる裏道・小道が潰される計画なのです。そう考えるとなんとも残念この上ないことと思われるのです。勿論このような計画は時間がかかることであるとは思いますが、2020年のオリンピック開催を口実にして、いっきに動き出す可能性も否定できません。これからの動きが気になるところです。


(クリックで拡大されます)
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緑色に塗った道は、今回歩いた小道。①から⑥は「白金台の裏道・小道」のそれぞれ文章と写真に対応している場所を示している。地図上を横切る破線で示されている部分は、環状4号線の予定地。

地図の出典(港区環境・街づくり支援部都市施設管理部「港区管内道路図」『近代沿革図集』)に加筆。

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