<白金台の街と庭園-26>

八芳園庭園③

 庭園への入口は、本館へ向かう途中の軽快な杉皮葺きの庭門から入るようになっています。庭園の見学は、施設の利用者とされていますので、庭内の茶室で久しぶりにお茶をいただくことにして門をくぐります。

 

 園路を歩きはじめるとすぐに、巨大な十三層塔が現れます。江戸時代中期の元文年間の銘が刻まれている御影石の層塔で、巨大ではありますが、広々とした景観の中に置かれているせいか、その大きさも添景として違和感はありません。

 層塔は、普通植込みの中や木立の中に据えられていることが多いのですが、ここでは園路脇に建っているため、間近に見ることができます。四角い塔身には、四面に梵字の種子が彫られていて、それは東西南北をあらわす仏の象徴とされていますが、勉強不足で私には読むことができません。いつか層塔を使う機会があるとするならば、方角を間違えて据え付けないように、こうした梵字も最小限のものは覚えておかなければ、と反省しながら心中のメモに記しました。


 層塔の建つこの場所は、左手に台地上に建つ壺中庵と、そこから緩やかに下る芝庭を見上げ、右手にツツジ、サツキの刈込みと、アカマツの木立の間から池を見下ろす庭園の中段にあたります。左手に広々と広がる芝庭には、アカマツとクロマツが散在していて、早くも傾きはじめた早春の日射しが枯れ色の芝生の上にマツの樹影を長く延ばしている光景は、それだけで気分をゆったりとさせてくれるようです。


 ところで、このような広い芝生の中にマツを点在させる手法は、大正期の大庭園によく見られたようで、大正時代の庭園の特徴の一つといわれています。しかし、東京ではそうした作風を伝える庭園は、ほとんど失われていますので、この八芳園は大正期の庭園の面影を残す貴重な庭園といえるのかもしれません。


 そのように考えると、芝生の中のクロマツもかつてはアカマツであり、何らかの理由で枯れた後にクロマツが植えられたのではないかとも考えられますが、どうでしょうか。

営業時間

平日10:00~18:00 

定休日

土・日曜日、祝祭日

お問い合わせ