<白金台の街と庭園-33>

八芳園庭園⑩

□ 水亭

 池の上に浮かぶように建つ水亭の姿は、八芳園の庭園を代表する景と言えるかもしれません。池の中に据えられた幾つもの大石の上に柱を立て、四阿としている造形は、庭園建築物としても珍しく、また池を中心とした庭園景観にもひときわ趣を添えているからです。


 四阿の形態としては入母屋造茅葺で、軽やかでやさしい姿になっています。池を眺めることのできる南、西、北の三方向には壁がなく吹き放しになっていて、岸を背にした東側だけに大きく丸窓をあけた壁があって、腰掛が壁沿いに設けられています。

  床は、岸辺から続く大形の沢飛石のような形で自然石が敷かれ、石と石の間に水面を見せたままで床面を構成している特異な造りです。水の上にいることを 実感させる効果があるとともに、よそ見をして歩けば踏み出した足を水中に踏み込んでしまう危うさを感じる造りでもあります。

 その危うさも却って人を引き付ける魅力となっているようで、庭内を巡る人たちの多くが、水亭の中に入り足元を確かめながら池周りの景色を眺めたり、泳ぎよる鯉を見て喜んだりしています。そこにはあえて不安を感じさせることによって人を楽しませる工夫があるようです。


 水亭から眺める景観は、正面に池を隔てて長大な斜面と、そこに植えられたアカマツ、サクラ、モミジなどの高木とびっしりと斜面を覆うツツジ、サツキの刈込が見え、左手には池の水際に据えられた雪見灯籠が、そして右手には奥行きのある水面の先に州浜と雪見灯籠、さらには植え込みの中に立つ国東石幢や角亭も遠目に見えています。ここは池を中心にした景色を楽しむために設けられた絶好の鑑賞ポイントになっているようです。


ミニ知識

石幢(せきどう)

(石幢には)二種の形式があり、単制のものは六角・八角の長い幢身の上部に仏像または梵字をあらわし、上に笠をおく もので、複制のものは幢身の上に仏像をあらわす龕部(がんぶ)を別に作るものである。(中略)複制のものは石灯籠に似ているが幢身は多角形で節を作らず、 龕部は火袋のような穴はなく、笠は蕨手をつけず、その差異は判然としている。(『石造美術入門』川勝政太郎、社会思想社、昭和42年)


営業時間

平日10:00~18:00 

定休日

土・日曜日、祝祭日

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