<白金台の街と庭園ー48>

桑原坂界隈 ③

□近代建築の点在する道(1)

 

 石垣をたどって、白金台から高輪台へと歩いてきた道筋を、こんどは逆に白金台の桑原坂へ向かいます。来るときには石垣ばかりを見てきましたが、実はこの道沿いには石垣の上に建つ近代建築の洋館や、静かなたたずまいを見せる近代和風の建物が、点在する道でもあるのです。

 第一京浜を背にして桂坂を上り始めると、左側に石垣を穿ってガレージとした建物が見えてきます。石垣の上には低い塀が階段にあわせて段状に設けられ、さらに奥にも高い塀が造られていて、厳重な外構と見えますが、低い塀に開けられた多数の窓状の開口部が一定の間隔で並んでいてそうした印象をやわらげ、軽快でリズミカルな感じを与えています。

 建物は2階建ての洋館で、屋根には赤い洋瓦を乗せ、奥には煙突も見えますので、暖炉を備えているのでしょう。

 しかし、建築の専門家ではない私には、玄関回りの作り方が少し変わった作りになっているように思えるのです。それは黒い木製の扉の左右の太い柱が、玄関の屋根を支える柱であると同時に高い塀とつながっていて、門柱のようにも見えるところです。言わば門であるとともに玄関でもあるということなのでしょうか。(どうも細かいことが気になる性分ですので…)それはともかく、石垣と2重の塀そして玄関回りの個性的なファサードが醸し出す、重厚感がありながらモダンな雰囲気は、散歩人の眼を楽しませてくれる建物なのです。

 

 その洋館の隣には、広い敷地のせいでしょうか高い石垣のある東芝高輪クラブがあります。道路からは庭木の間に2階部分がわずかに見えるくらいですが、本格的なスパニッシュ様式の建物のようです。

 後日調べたところでは近代建築史では有名な建物で「東京湾を望む高輪の高台に位置する西洋館で、大正14年に三井財閥系の財界人・朝吹常吉邸として建てられた。木造2階建て、地階及びアチックを有する。設計はウイリアム・メレル・ヴォーリズである。」(『港区の歴史的建造物』港区教育委員会、2006年)というものでした。

 またこの建物は、フランス文学者の朝吹登水子さんの生家でもあったそうです。現在は東芝の迎賓施設として管理されています。

 

 二本榎通に戻ると、交差点の角に高輪消防署二本榎出張所(旧高輪消防署)があります。鉄筋コンクリート3階建で、昭和8年に建てられた建物です。

 1,2階は街路に沿ったL字形のプランで、角は曲面としてそこに入口が開けられ、その上に円筒形の講堂と、さらに火の見櫓の望楼が乗った、消防署ならではの独特の形態です。

 曲面の多いことと縦長のアーチ窓が、柔らかく優美な印象を与えているようで、街のランドマークとして親しまれているようです。

 建物ができた当時は、ここが海抜25メートルという高台にあって目立ったこともあり、その特徴のある姿から「岸壁上の灯台」とか「海原を行く軍艦」とも言われていたようです。(「高輪消防署二本榎出張所」東京消防庁パンフレット)

 この建物は眺めるだけではなく、うれしいことに出張所の受付で申し込むと、内部の見学ができるのです。狭くて急な廻り階段を上って3階の講堂に出ると、円形の部屋はアーチ状の天井と周囲に10カ所のアーチ窓のある空間で、消防関係の資料や竜吐水などの消防器具が展示されている資料室になっていました。

 

 また出張所の1階の駐車場には、昔の消防車も展示されています。きれいに手入れをされて、今でも現役で活躍しそうな姿を見て、何度もまわりを見て回ったり、運転席をのぞき込んだりしているうちに、なんだか子供のころに戻ったかのような気分になってしまいました。

 散歩の途中の愉しいおまけのひと時でした。

 

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