<白金台の街と庭園―58>

シェラトン都ホテル東京の庭園 ④

 園路を狛犬のいる辺りまで戻ると、反対側には芽吹いたばかりのイロハモミジの若葉が頭上をおおう、広い園路が奥まで続いています。

 

 その園路沿いの右手に、三重の石塔が見えました。近づいて見ますと三重の石塔とはいえ、和風庭園でよく見かける石塔とは、だいぶ印象の異なるもののようです。

 

 そばに説明版が立てられていましたので、その解説を引用させていただきます。

 

 

「三重石塔 ー 棟に鯱(しゃち)形瓦を飾る。各層に扉形をあらわしており、初層には二天の立像を浮彫する。降棟(くだりむね)先の瓦彫りに「王」字をみるなど、異国的要素の顕著な石造層塔の古例である。」(東京国立博物館名誉館員 関忠夫 記)

 

 簡潔な解説の文章は、わかる人にはわかるのかもしれませんが、私のような者には、わかりにくい解説です。そこで一つづつ見てみることにします。

 

 まず石造美術について詳しいことはわからない者の眼にも、日本的ではなく異国風のところは感じられます。その一つは、三層目の屋根、つまり棟の上に乗る鯱型の造形で、これは城や寺院の屋根の上に見る”しび”と同じですが、普段眼にする日本の層塔は、三重塔の建築に見られる相輪とよばれる細い柱状のものが乗っているのとは、明らかに異なります。

 

 二つ目には、各層の屋根の表現に瓦葺きを表す彫り込みがされている点で、これも日本の層塔にはあまり見られない写実的な表現です。三つ目は、基部の初層の塔身に二天の立像が浮彫りにされているところで、日本の層塔では四方仏(釈迦仏、阿弥陀仏など)や仏を象徴する種子(梵字)を刻んだものが多く、天部(帝釈天、持国天など)の像を刻んだ例はあまり見られないことなどがあげられます。つまりこうした細部を含めた全体の形態が、どこか異国風の印象を与えるのでしょう。

 

 さらに園路を進みますと、今度は石造の仏様があらわれました。四方吹き放ちの小屋の中に安置された、白い石を丸彫りにした女性的な優しげな仏様です。この仏像にも解説がつけられていて、次のように記されています。

 

「文殊菩薩像 - 獅子に乗る文殊菩薩像である。ただし、わが国通例の文殊像と像要が異なり異国風である。石材も海外産の大理石の類か。彫刻は随所を透すなど、彫技がすぐれ、表現が綿密である。」(同上)

 

 文殊菩薩は、木像や仏画では見ていて、獅子に乗り、智慧を司る仏としてなんとなく知ってはいましたが、仏の表情や左手に数珠を持ち右手を膝に置く形、そして獅子に横向きに乗る姿など、見慣れた仏とは確かに違うようです。それらを像要というのかもしれません。また石材が白く滑らかで大理石らしいことも、日本の仏像とは明らかに違うことが解ります。

 

 しかしこうした異国風の石造美術は、他の庭園ではほとんど見たことがないように思われますが、こうしたものを多く置いているこの庭の、ちょっと不思議な好みというかコレクションには、どのような訳があったのか、また知りたい気持ちが増してきます。それにしても、この先どのようなものがあらわれるのか、期待するような気持になってくるのは、やはり普通の庭と異なる感覚が流れているからかもしれません。

 

 

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