<白金台の街と庭園ー64>

シェラトン都ホテル東京の庭園 ⑩

 富士塚の頂上に登ってみますと,園路は土のままながら後ろの台地の上に続いています。右手は隣地の明治学院の建物を隠すように続く建仁寺垣、左手は崖で、その間のわずかに平坦なところに細い道が通っています。この道は誰もが散策できる園路ではないようで、富士塚を登った人だけが歩けるような設定になっています。

 

 木々の間からは眼下に先ほど歩いていた広い舗装された園路が曲線を描いているのが見下ろせ、改めて高低差の激しい土地であることを実感します。

 やがて園路は山道のような石段を下り始めますが、突如として眼の前に巨石を組んだ門のようなものが現れました。まったく、次から次と変わった石造物が現れるものです。

 

 大きな自然石を左右に立て、人がくぐれるほどの高さに、厚みのある平たい石を載せていて、どう見ても門に違いはないと思われるのですが、なぜこんな場所にこんな石の門を設けるのか、これも不思議な気がします。

 

 

 石門をくぐって振り返ってみますと、荒々しいとも見える石門は、どこか山奥の、修験者の修行する、聖なる土地の結界の入り口を示すかのように立っているように思われます。

 

 立ち止まってそんなことを考えていると、ふと、これは富士塚から歩いてきた道は、逆にこちら側から歩かなければいけないのかもしれない,と思ったのです。つまり私は本来の巡拝路を、逆にたどってきたのではないかと思われたのです。

 この庭に出た時からのことを、最初から振り返ってみます。まず初めに庭園に出ると、正面に狛犬がうずくまる石段がありました。今思えば狛犬は、庭園の装飾的なものとして置かれていると思ったのっですが、実は単なる飾りではなかったようで,

巡拝路の入り口を守っていたようです。石段を上がると崖の中腹には平場があって、写真のような十五層塔が建っています。層塔は寺院の塔、つまり寺院の建物の象徴とも考えられます。

 

 そしてその奥の崖の登り口に、石門が立っているのです。石門をくぐると山道のような石段の左手の崖の途中に、石仏があります。広場の脇にあったものと同じ石仏ですが、こうなるとここに石仏が置かれていることにも意味を覚えます。そしていよいよ修験の地の雰囲気がでてきます。さらに山道を登ると、崖沿いの細い道に出て、尾根道を思わせるその道をたどると、やがて富士塚の頂上にたどり着く、という形になります。

 

 こうしてこの道をたどることによって、富士塚を中心とした一つのストーリーが現れてきます。さらに想像を膨らませますと、富士塚を富士山と見立てると、富士塚の下の広場は湖であり、枯れ流れは湖から流れ出す川と見ることができるのではないでしょうか。そしてこうしたストーリーを頭において庭を見直すと、これまでばらばらのように見えていた各部分のデザインは、全く違った互いに関連する景観として見えてくるようです。

 

 しかしこのストーリーは、あくまで私の想像であり、妄想ともいえるものかもしれません。新たに修復された富士塚はともかく、肝心の頂上に祀られている浅間様の祠があまりにも貧弱で、また祀っている様子も見られないことから、そうしたストーリーは私の思い過ごしではないかとも思えるのです。

 

 それはともかく、人は庭を見ながら自分なりにその造形の持つ意味を見出して、理解したいと思うのかもしれません。多くの見慣れた和風庭園とはどこか異質な、そして不思議な石造物の散りばめられたこの庭は、造形としての美では評価はさほど高くないとしても、ミステリアスな想像を誘う魅力は十分に感じられるのです。

 

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