<白金台の街と庭園ー76>

シェラトン都ホテル東京の庭園 ㉒

 

□歴史をたどるー昭和時代(6)

 写真3は、洋館の玄関前から主庭に入る石筍門とその周辺を写しています。この石筍も現代のホテルの庭に見られるものですが、写真に写っているものはそれよりもだいぶ大きいように見えます。

 

 それはともかく、玄関脇から屈曲して続く生垣に中に、石筍を門柱のように左右に立てた鉄製の門扉があり、それと共に生垣を背景にして立つ石筍は、ヨーロッパの庭園に見られる彫刻のようです。そして石筍の足元には玉造りの低木と、草花が植えられている感じは洋風のボーダーガーデンといった印象を受けます。

 

 また写真には写っていませんが、生垣の後ろの芝生の庭には、ホテルの庭に残っているような大理石の仏像も置かれていたようで、重森氏はこのあたりの景観は「イタリアなどの庭園に於いて見られるが如き手法が示されている」と記しています。

 

 こうした洋風の造りは、この場所が生垣と石筍門を挟んで、洋館の玄関と庭側のテラスとに接しているためと思われますが、おそらく昭和7年に竣工した洋館に合わせて改修、作庭された邸内では最も新しく、また洋風の感じが色濃く表れている一画になっています。

 次の写真4は、主庭の広い芝生の庭側から一段低い位置にある池の水面越しに、崖の土留めの石組と枯滝の石組を写したもので、池中の右手には珊瑚石があり、崖の上にはここにも二基の石筍が見えています。

 

 このあたりは和風の景観になっていますが、重森氏は「それ等の石組手法は、決して立派なものとは言い難いものであり、明治時代、特に東京地方に於ける堕落した手法がそのまま表現されていて、相当悪趣味が出ているのである。」と強い調子で批判しています。これは崖の土留めの石組と枯滝についての批判ですが、景観全体についてはなにも記してはいません。

 

 この場所は、以前に造られていた低地の和風の庭と、後から作られた上段の洋風の庭の接点となっている所です。そのためなのかあるいは藤山氏の好みなのか、渋い色の石で構成された和風の庭の中に、真っ白な珊瑚石と石筍が点景として置かれているのは、和洋折衷的な表現を表すために、洋風的な要素として加えたのかもしれないと思いますが、藤山氏の独特な感覚を見るとなんともわからないというのが正直なところです。

 

 

 

 写真5は、金閣寺を模したといわれる、白金閣の西側に接して建つ茶室、聴松亭の庭です。これまでとはがらりと趣の変わった純和風の庭で、湧水を利用した流れを中心とした茶庭となっています。

 

 奥の濡れ縁近くには縁先手水鉢があり、濡れ縁の床下まで入り込んでいる流れの中には沢飛石と流れ手水鉢を配して、狭い空間ながら趣向を凝らした変化に富んだ茶庭です。

 

 また奥の一段高くなっている所に、滝の石組が見えますが、重森氏はこれを枯滝としています。その枯滝の前を通って茶室の北側に廻った所にあるのが、写真6のもう一つの茶庭です。

 

 崖沿いに土留めとして組まれた石組を背景に、自然石の水鉢、さらに奥に廻り込むように延びる霰敷きの延段、小振りの朝鮮燈籠をアクセントにして、シホウチクとカクレミノというシンプルな植栽でまとめた侘びた造りです。

 

 この二か所の茶庭について、重森氏は「甚だ幽玄且つ立派な茶庭」と高く評価していますが、地形を生かした造形的な面白さは、当時東京で多く造られていた自然主義的な庭よりも、重森氏の好みにかなったのかもしれません。

図版出典:『日本庭園史図鑑 明治・大正・昭和時代(二)』重森三玲 有光社 昭和12(1937)年

引用文献: 同上書

 

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