<消えた渋谷川と街と庭園―23>

 

新宿御苑 ⑧

 

□フランス式整形庭園 (2)

 整形式庭園の中央部は、バラ園になっています。細長い長方形の一端が曲線になっているバラ園は、上下二段に区切られていて、それぞれ周囲を二重の低い生垣で縁取り、バラはその間に植えられています。鑑賞する人たちは、砂利道の園路を、バラ園に沿って周囲を巡りながら見て歩く形になります。この日は5月の天気の良い日ということもあって、咲き誇るバラを見に多くの人が訪れていました。

 バラ園の内側は、広い芝生になっていて、下段ではその真ん中に正門のあたりから見えていたシュロの寄せ植えがあり、アクセントになっています。シュロは、上野池之端の旧岩崎邸庭園の洋館玄関前の車廻しにも植えられていましたので、明治・大正期には最も洋風のイメージをもつ植物だったものと思われます。

 

 これに対して上段の芝生の中には、高さを変えて低木を丸く刈り込んだいくつかの塊を、緑のオブジェのように配していますが、こうした植栽は芝生の広い空間を引き締める効果を考えてのことなのかもしれません。

 

 バラ園の周囲は、正門近くから続く刈り込み垣が取り巻き、さらにその外側にはプラタナスの並木が背景を作っていて、色とりどりの色彩のバラの花がくっきりと浮かび上がっています。

 

 バラは、品種ごとの花の形や色彩を詳細に見、そして香りを楽しむことが 多く、そのため多くのバラ園では、花壇の区画も小さくまじかに見られるような造りになっています。御苑のバラ園でももちろん一株ごとに品種名を付けていて、それぞれの花を観賞することができますが、それよりも圧倒的な広さの整形式庭園の造形美と、それを彩る色彩としてのバラの美しさを観賞する庭のように思われます。

 

 それというのも、もともとこの庭は、御苑の中心となるはずであった幻の宮殿へのアプローチであり、前庭だったのですから、人の通行というよりは馬車での通行を前提とした造りになっていたのです。つまり個々の花よりも集団という美しさが求められていたのではないかと思われるのです。

 

 そうした意味において、邸宅の庭園内に設けられた、人が散策しながらバラの一輪一輪を観賞するバラ園や、バラを中心とした庭園とは、全く異なる性格と形態とを持っているのではないでしょうか。

 

 バラは秋にも開花期を迎えます。昨年の晩秋御苑を訪れた際に、最盛期は過ぎたものの咲き残りのバラを見ることができました。

 12月のはじめという、バラの季節としては遅い時期でしたので、さすがに花数は少なくまた芝生も枯れ色となり、プラタナスも葉を落として少し寂しい庭でした。しかし芝生を縁取るドウダンツツジの生垣の紅葉と、落葉したプラタナスの幹が白々と立ち並んでいて、また春とは異なる美しさを見せていました。

 

 こうした光景を見ますと、プラタナスは整形式庭園を構成する要素として、きわめて重要な役割を持っていることを改めて認識します。葉のある時期には、円錐形の樹形が、そして落葉した後には白い樹幹が立ち並ぶことによって、背後の樹林とははっきり区切られていることがわかります。

 

 バラは、こうした整形式庭園にときおり華やぎをもたらす役割を持っているようです。

 

 

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