<消えた渋谷川と街と庭園―28>

新宿御苑 ⑬

 

□ イギリス風景式庭園 (2)

 御苑のイギリス風景式庭園は、広い芝生とそこを貫くビスタラインに特徴がありますが、その軸線を際立たせているのは、芝生の左右にあってパースペクティブを強調する樹林の存在です。樹林が空を背景につくりだす樹冠のラインと、樹林の下枝と芝生の接する地表面につくりだしている左右それぞれのラインが、消点に向かって延びているからこそ、中央の軸線であるビスタラインもはっきりと認識できるのだと思われます。

 

 それと共に消点に近づくにつれて芝生の幅が狭まり、左右の樹林の間隔が近くなるように計画されていることも、パースペクティブを強調する手法でしょう。下の写真は、新宿門に近い場所から西側を映したものですが、人物の姿から芝生が極端に狭くなっているのがわかります。

 

 樹林は、主にスダジイやマテバシイを中心とした常緑樹で、これらの木々が基本的なラインをつくりだしていますが、その前面に芝生に入り込むように不規則に落葉樹のサクラをはじめ花木類が植栽されていて、それが季節ごとに花や紅葉などで景観に彩りを添え、空間構成の見事さだけではなく庭園としての豊かさを醸し出しているようです。

 イギリス風景式庭園の芝生に沿って植栽されている落葉樹は、その多くはソメイヨシノをはじめとするさまざまな品種のサクラで、花時にはさすがに広大な芝生が人で埋め尽くされるような状態になります。しかし他の季節にも、大木となった花木の花も少なからず見受けられます。

 5月のこの時期に、花を見ることができる花木の一つにユリノキがあります。ユリノキは、北アメリカ原産で明治初期に初めて渡来した種子から成長した木が、現在では30mを超える巨木になって、この庭園内にそびえているのが見られます。街路樹などにも使われていて、都内では迎賓館前や日比谷公園近くに植えられ、街路樹としては相当の大木に育っていますが、それらは御苑のユリノキから採取された種子がもとになった木々と言われています。

 

 ユリノキの街路樹などでは強い剪定を行い、また人や車の通行、道路標識の視認性確保等のために下枝が切られて、花も少なくまた咲いても高い枝先に咲いているため、近くで花を見る機会が少ないのですが、御苑では低い位置に下枝があるために、花も眼の高さで見ることができるのです。

 もう一つはホオノキの花です。ホオノキは日本原産の落葉樹で、成長が早く、大木になり葉も大きいため広い空間をもつ公園などに植栽されます。花は20㎝ほどもあるハクモクレンに似た大型の白い花弁をもち、良い香りがします。このホオノキの花も、高い枝に咲いているのを、見上げるように眺めることが多いのですが、これも御苑では眼の前に見ることができます。

 

 これらの花木は、上の写真の樹下に集まっている人の姿を見ますと、いかに雄大な樹形かということがわかると思いますが、同時に下枝が人の高さほどのところから広がっているいることもわかります。実はこのような樹形は、他の公園や緑地ではあまり見られない樹形で、一般的には安全のために枝下の見通しがきくように下枝が切られることが多く、そのためにこうした樹形をもつ木々の姿は東京では極めてまれな姿なのです。

 

 そして広大な空間に広がる芝生の中に点在する、これらの落葉樹の雄大な姿があってこそ、イギリス風景式庭園らしさを私たちは実感するのではないかと思われるのです。

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