<消えた渋谷川と街と庭園―31>

新宿御苑 ⑯

 

□上の池・日本庭園 (1)

 

 「母と子の森」から薄暗い常緑樹の樹林をぬけて上の池・日本庭園に出ますと、いっきに視界が開けます。広々と広がる空間に、たっぷりとした水面が目の前に現れ、背景には常緑樹に混じった落葉樹の紅葉が色を添えています。

 

 池の中央には中島が浮かび、そこに南岸と北岸から二本の橋がかかり、ゆったりとした日本庭園の景観が展開しています。庭園を一望する位置は、北岸の小丘上に建てられた四阿と思われますが、そこから望む庭園の背景の樹林の上に巨大な高層ビルが威圧的な姿をみせています。こうした庭園景観をそこなうような高層建築は、東京の都心部にある庭園に共通する悩みですが、あきらめて視線を低くして見ないようにするしかありません。

 

 池を取り巻く樹林は、南岸の西寄りから西岸にかけて、水面にかぶさるような姿になっていますが、南岸の東寄りから東岸にかけてと、北岸の四阿の前は芝庭になっています。芝生の中にゆるやかな曲線を描いて池を巡る砂利敷きの園路や、点在するサツキの刈り込みは、玉藻池の芝庭と共通するデザインのようです。

 

 池の周りを時計回りに一巡りしてみます。池の東岸から先ほどの四阿のあたりを眺めますと、北岸は池のほとりから一段高くなっていて、渋谷川の浅い谷を池にしたことがよくわかります。

 四阿は芝生の斜面の上の小高い場所に位置していて、庭を眺める視点場であるとともに、また反対に眺められる添景ともなっています。その左側に見える小屋は、菊の展示用の菊花壇で、よしずと青竹でくみ上げられた花壇の上屋は、仮設ながらすっきりとした品格があり、さすがに皇室の菊づくりの伝統を受け継いだ作り様と感じられます。菊花壇がこうした庭園の中にあっても、庭園景観の中に溶け込んで、却って添景物として引き立てているのは、手間をかけてもきっちりとした上屋が作られているからだと思われます。

 

 ところで、ここからの眺めの中で池の護岸が新しくなっているのに気が付きました。護岸はせき板を丸太で止めた簡素な造りですが、昔の記憶ではたしか丸太の乱杭止になっていて、芝生が水面近くまで下りていたように思います。私の記憶違いかもしれませんが、水面と芝生とがすっぱりと区切られて、なにか護岸が目立ちすぎるように思われるのです。これも人が立ち入って池に滑り落ちることを防ぐ方策かもしれませんが、人工的な要素が強く出すぎていて、自然風の印象が損なわれているように感じるのです。 

 

 

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