<消えた渋谷川と街と庭園―34>

新宿御苑 ⑲

 

□水路(流れ)・日本庭園 (2)

 この庭は、東西に細長い空間の中央を水路(流れ)が流れていますが、その他にも二筋の流れが見られます。北側の流れは、樹林の茂るゆるやかな斜面が下って平坦な芝生に接する位置にあって、浅い流れながら黒朴石や玉石で縁取られた庭園的な造りになっています。

 

 流れの一部は、水の見られない枯流れのようになっていますが、わずかに水の流れているところもありますので、右の写真に見るように少ない量ながら湧水があるようです。この流れのある位置は、渋谷川の旧流路の川岸の下部に当たりますので、地形的にはこうした湧水が出るのも当然とも思われます。

 もう一筋の南の流れも、やはり庭の南側を区切る斜面の樹林の裾に設けられています。落ち葉が降り積もってわかりにくくなっていますが、これも流れの縁を黒朴石で縁取っています。ここも斜面の下にありますので湧水を流すためとも思われますが、同時に斜面を流れ落ちる雨水もこの流れに集めて、池に流し入れる役割もあったのではないかと思われます。

 

 高低差のある庭では、雨水の排水計画がなにより重要になりますので、こうした斜面の下に排水溝を設けることは欠かすことのできない設備です。その排水溝を庭園的に修景して流れとし、園路や植栽地に泥水があふれ出るのを防いでいたものと考えられるのです。

 

 こうしてこの庭の三本の水路(流れ)を見て来ますと、中央を流れる堀のような造りにもそれなりの意味があるように思われます。これは推測になりますが、普通に考えれば中央の流れこそ本来庭園的な演出が凝らされてもいいように思われますが、昔の天龍寺の湧水の水量が多かった時代には、上の池の水位の調節や大雨時の水位調節で、時に大量の水を流すことがあったのかもしれません。そうした際には、庭園的に見ばえのする浅い流れでは排水しきれないために、あえて水堀状の流れにしたとも考えられます。そしてそれを補うように、北と南の排水路を庭園的に造ったのではないでしょうか。

 

 少し深読みが過ぎるのかもしれませんが、造られた形には必ずと言っていいほど意味があるはずです。この庭の中心的な景となるはずの中央を流れる水路が、なぜ庭園としては面白みの少ない掘割のような形に造られたのか、私なりの解釈を記してみましたが、本当はどうだったのでしょうか。

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