<消えた渋谷川と街と庭園ー39>

新宿御苑 ㉔

 

□中の池・イギリス風景式庭園 (1)

 日本庭園から、池の南岸の園路をたどり、旧御涼亭の前を通って庭園の東の端を限る常緑樹の樹林を抜け出しますと、がらりと景色は一変します。目の前には奥行きの深い水面を中心に、サクラをはじめとする落葉樹が淡い紅葉を見せていて、その奥のマツ林も、日本庭園とは違って、自然な樹形で、ここがイギリス風景式庭園の一部であることを思い出しました

 

 

 右手の千駄ヶ谷門から来る園路をたどって左に、池の北岸に向かい、ゆるやかに傾斜している芝生を上りますと、まっ平な芝生が広がって、その中に点在する巨木たちが雄大な樹形を高くそびえさせています。日本の公園にはちょっと見られないイギリスの庭らしい景観を見せていて、さすがに日本最初のイギリス風景式庭園であり、宮廷庭園であった歴史を感じます。

 写真のこの木は、以前にビスタラインに沿って歩いた、芝生の真ん中のルートからすればやや端に位置していますが、巨木の多い御苑の中でも最も樹高の高いユリノキで、40mをこえているそうです。

 

 巨木というだけではなく、東京の街路樹で使われているユリノキの街路樹は、これらの木を親木として増殖された苗木が、各地に植栽されたといわれています。言わば東京の街路樹の元祖でもありますので、敬意をこめて御苑を訪れた時には、このユリノキを一目見ることにしています。

 

 さて、ユリノキへの挨拶を終えて、再び中の池に戻ります。途中芝生の斜面から池を眺めますと、浅い渋谷川の谷と台地のうねるような地形が、イギリスの風景を思わせて、この地をイギリス風景式庭園とした、マルチネーと、それを実現させた福羽逸人氏ら先人の地形を読む力を感じます。

 

 さて中の池ですが、北岸の、台地から芝生の斜面にかかる位置にレストハウスがあります。案内図では、ほかの施設は休憩所とされていますが、ここだけはなぜかレストハウスなのです。その理由はわかりませんが、近年建て替えられて今風のモダンなデザインの外観に代わるとともに、スターバックスコーヒーが入っています。今風の施設でありサービスなのでしょう。

 

 このレストハウスからは、中の池の水面を近景として、対岸の千駄ヶ谷台地を広く見渡す、眺望に優れた場所ですが、同時に周りからはこの建物が景観的なポイントとしても見られる存在でもあります。そうした意味では、建物の外観も重要な景観要素と言えるでしょう。ところで、何事も昔の方が良いというわけではありませんが、庭園建築という見方からするとイギリス風景式庭園には前の建物の方が、こじんまりとした寄棟の屋根が似合っていたように思われたのですが、これも年寄りの繰り言でしょうか。 

 ちょっと参考に、昔の建物の写真を引っ張り出してみました。

 左の写真は、2007年の春先の写真ですが、中の池の対岸から写したものです。池の面には当時は水連が一面に繁殖していて、良し悪しは別にしても、それなりのイギリス風の雰囲気が感じられていたと覚えています。

 レストハウスもちょっと昔風で、好ましいたたずまいでした。

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